景品表示法・広告法務
当事務所では、企業の皆様が押さえておくべき《景品表示法》対策、《広告法務》に関する各種アドバイスを実施しております。
まずは、お気軽にご相談いただければ幸いです。
1. 企業活動と広告表示
企業が押さえておくべき広告表示のポイント
〈1〉はじめに
いうまでもなく、現代社会においてはあらゆる企業活動に広告はつきものです。しかしながら、企業が自社の製品やサービスを顧客にアピールするなどに当たって、広告表示に関する細かなルールが多数存在することはあまり知られていません。そのため、企業において、せっかくコストをかけて広告を出しても、事後的に消費者庁などから指摘を受けるなどして、広告の訂正等を余儀なくされるケースが散見されます。
万が一、そのような事態が生じれば、①余分なコストがかかるのみならず、②企業イメージのダウン等、深刻な結果も招きかねません。そのため、企業としては、予め広告表示の規制に関する知識を学んでおく必要が高いといえます。以下、広告表示のルールに関する基礎知識を解説していきます。
〈2〉近時の処分事例
広告表示に関する法律の代表的なものは、後述の「景品表示法」(正式名称は、「不当景品類及び不当表示防止法」といいます。)があり、同法違反を理由とする行政処分例としては、消費者庁のホームページなどで次のようなものが紹介されています。
①措置命令
受験予備校に対する処分…受講生募集パンフレットに、水増しされた架空の前年度合格率を表記していた。
②措置命令
着物等販売業者に対する処分…商品広告に実際の価格を安く見せるために、販売実績のない架空の「一般小売店価格」なる表記を行った。
③措置命令
ガソリンスタンドに対する処分…ハイオクと表示し販売していたガソリンの大半はレギュラーガソリンであった。
④指示
大手飲料メーカーに対する処分…自社のお茶を宣伝するホームページに、「ミネラル補給に海洋深層水を使用」等の表記をしたが、実際のミネラル含有量は極微量であった。
⑤措置命令
通販会社に対する処分…新聞広告において「本日より3日間限り、¥9,800!」「4日目以降は当社通常販売価格¥12,000となります」と表記したが、実際には¥12,000で販売した実績は一切なかった。
⑥措置命令
太陽光発電システム販売会社に対する処分…チラシにおいて、「192,000円/年の節約!」「しっかり貯蓄にまわせます。」と表記したが、実際にはそのような利益を安定的に得ることはできないものであった。
⑦上記のほかにも、複数の処分例が存在します。
具体的なケースについては、消費者庁のホームページにアップされています。
〈3〉広告表示の基礎知識
広告表示については、消費者が商品やサービスを適正に選択できるようにする趣旨から、景品表示法、その他の法令によるルールを守らなければなりません。具体的には、①業種、商品、サービスの種類等に応じて表示を義務付けられる事項と、②禁止される事項があり、さらに③業界の自主的ルールとして公正競争規約が存在します。以下、詳しく解説していきます。
なお、表示自体に関わるものではありませんが、広告物の制作を外注する場合は、下請法及び「印刷業における下請け適正取引等の推進のためのガイドライン」に留意する必要があります。
また、電子メール広告を送る場合については、特定商取引法、特定電子メールの送信の適正化等に関する法律の規制に留意する必要があるなど、法規制が多岐に渡っていますので、注意が必要です。
1. 表示を義務付けられる事項
まず、商品や販売方法によって、表示を義務付けられる事項があります。
例えば、商品について表示義務を負う典型的な場合としては食品があげられます。食品は、名称、原材料、保存方法、原産地等の品質表示基準が定められており、製造業者等は、これらの品質表示義務を負います。
また、食品、添加物、器具または容器包装に関する表示基準が定められており、その基準に基づいた表示をしなければ、販売等をすることができません。ほかにこのように法的な表示義務を負う他の商品としては、家庭用品などがあります。
さらに、販売方法(Webサイトで販売する場合等も含む。)によって、表示義務を負う場合があります。例えば、通信販売(Webサイトで販売する場合等も含む。)において販売条件等を広告する場合、事業者は一定の表示事項を記載すべき義務を負います
2. 表示が禁止される事項
次に、法律によって一定の表示が禁止される場合があります。例えば、健康食品について、病気の治療や予防等の医療品的効能を表示することは禁止されています。また、特定保健用食品、栄養機能食品は、健康増進法に基づいてのみ効果効能を表示することが許されており、それ以外の表示は禁止されています。
広告表示規制に関するポイント
広告表示規制が存在する主な法律
No. | 法律名 | 規制対象 |
1 | 不当景品類及び不当表示防止法 | すべての商品・役務 |
2 | 特定商取引に関する法律 | 通信販売、連鎖販売取引、特定継続的役務契約、業務提供誘引販売取引 |
3 | 特定電子メールの送信の適正化等に関する法律 | 電子メール広告 |
4 | 農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律 | 生鮮食品、加工食品(酒類を除く) |
5 | 食品衛生法 | 食品、添加物、食器具 |
6 | 健康増進法 | 食品(酒類を除く) |
7 | たばこ事業法 | たばこ |
8 | 酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律 | 酒類 |
9 | 家庭用品品質表示法 | 繊維製品、合成樹脂加工品、電気機械器具、雑貨工業品 |
10 | 薬機法(「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」・旧薬事法) | 医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器 |
11 | 医療法 | 病院、診療所、医業、歯科医業、助産師、助産所 |
12 | あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律 | 指圧師、はり師、きゅう師 |
13 | 柔道整復師法 | 柔道整復師 |
14 | 金融商品取引法 | 投資金融商品 |
15 | 銀行法 | 投資性の高い預金 |
16 | 保険業法 | 投資性の高い保険 |
17 | 信託業法 | 投資性の高い信託 |
18 | 商品取引所法 | 先物商品 |
19 | 割賦販売法 | 割賦販売、ローン提携販売、包括信用購入あっせん、個別信用購入あっせん |
20 | 貸金業法 | 貸金 |
21 | 宅地建物取引業法 | 宅地建物 |
22 | 旅行業法 | パック旅行 |
23 | 国際観光ホテル整備法 | ホテル |
24 | 温泉法 | 温泉 |
25 | 不正競争防止法 | すべての商品・役務 |
26 | 軽犯罪法 | すべての商品・役務 |
3. 不当表示の3類型
その上で、景品表示法によって「不当表示」とされるのは、次の3類型であり、これらを十分に理解することが重要です。
まず①優良誤認は、品質、規格その他の内容について、②有利誤認は価格その他の取引条件について、表示内容と表示に対応した事実との間にズレ(いわゆるウソ・大げさ・まぎらわしいもの)がある状態が違法とされるというものです。
また、③景品表示法5条1項3号が指定する6類型(①無果汁の清涼飲料水等、②商品の原産国、③消費者信用の融資費用、④不動産のおとり広告、⑤おとり広告、⑥有料老人ホーム)についてはさらに詳しい規制があるため、自社の商品・サービスが該当する場合は、これらについても留意する必要があります。
(1)優良誤認
品質、規格その他の内容に関する表示について、実際の商品・サービスもしくは競争事業者の商品・サービスよりも事実に相違して著しく優良であると不当にアピールする表示は、優良誤認とされ、消費者庁による指導や措置命令等の処分が行われます。
ここで十分に理解しておく必要があるのは、消費者庁による処分の流れです。消費者庁は、優良誤認かどうかを判断するにあたり、当該表示の合理的な根拠を示す資料の提出を事業者に求めることができます。その際、事業者が一定期間内(例えば、消費者庁長官が文書で資料の提出を求めた日から15日後)に提出できなければ、その時点で優良誤認表示とみなされてしまいます(不実証広告規制)。
このような事態を避けるために、もし品質、規格その他の内容に関する表示について強調表示を行う場合は、合理的な根拠を示す資料を準備しておかなければならないことに留意する必要があります。
(2)有利誤認
価格その他の取引条件について、実際の条件もしくは競争事業者の条件よりも著しく有利であると誤認させる表示は、有利誤認とされ、消費者庁による指導や措置命令等の処分が行われます。
有利誤認のうち特に注意を促す必要のある表示として、価格表示があります。とりわけ二重価格表示(例えば“通常販売価格¥5,000円のところ¥3,000円”と表示する場合など)を行う場合は、本当に¥5,000円での販売実績がなければ不当表示となり易く、比較対象価格の設定について十分に留意する必要があります。
(3)原産国ほか指定6類型
商品の原産国について、実際の原産国を判別しにくい表示をすると、消費者庁による指導や措置命令等の処分を受けることになります。この原産国表示を含む6類型が不当表示として規制されています。
なお、食品については、原産国・原産地を誤ると品質表示義務違反となり、行政処分である指示、指示に違反した場合に命令を受けることになります。さらに、製造業者等が守るべき表示の基準に違反し、原産地(原料または材料の原産地を含む。)について虚偽の表示をした飲食料品を販売した場合、刑罰規定があるので、注意しましょう。
4.公正競争規約
業種によっては、公正競争規約に留意する必要があります。公正競争規約は、景品表示法31条に基づき、事業者または事業者団体が内閣総理大臣(消費者庁長官に委任)および公正取引委員会の認定を受けて設定された自主的ルール(表示規約と景品規約)であり、公正競争規約に参加している構成員を拘束するものです。
したがって、違反した場合は、構成員は公正競争規約の運用団体から処分を受けます。
なお、公正競争規約違反行為が景品表示法にも違反する場合は、景品表示法に基づく措置命令も同時に受けることがある点には注意を喚起する必要があります。そして、公正競争規約に参加していない者が公正競争規約に違反した場合、処分は受けませんが、その表示が景品表示法に違反する場合には、消費者庁により措置命令を受けることになります。
具体的な公正競争規約については、社団法人全国公正取引協議会連合会のホームページ等が参考になるでしょう。
5.課徴金納付命令
2016年4月から、優良誤認及び有利誤認ともに、不当表示に対し、ペナルティとして「課徴金」が課せられることになりました。概ね、不当表示に関わる過去3年間の売上の3%に相当する金員の支払を余儀なくされるリスクがあります。企業としては、不当表示によるダメージがより一層大きくなったことと理解し、リスク回避に努めることが必要でしょう。
6.事業者が講ずべき管理上の措置
企業においては、自社が扱う表示に関し、適正に管理を行うために必要な体制の整備、その他の必要な措置を講じなければなりません(景品表示法26条1項)。
当事務所では、企業が取扱う表示に関する体制整備等に関するサポートを実施しております。
お気軽にご用命いただければ幸いです。
2. 広告表示10のチェックポイント
広告表示規制に関する基礎知識を踏まえて、広告の企画から配布までの一連の流れを通じて、押さえておくべき10個のポイントを解説していきます。
チェックポイント1 どんな広告表示が規制対象となるか
あらゆる表示媒体を使用した商品・サービスに関する表示が広告表示にあたる。
商品本体への表示(容器・包装などを含む。)、店頭における表示、チラシ広告、雑誌による広告、テレビ、ラジオ、インターネットによる広告などあらゆる媒体を含みます。
チェックポイント2 販売方法に着目
例えば、通信販売の方法による場合は、広告に表示すべき事項が法律で定められている。
特定商取引法11条1項には、通信販売(インターネット販売等を含む。)の場合の広告に表示しなければならない事項、いわゆる表示義務が規定されています。
その他、訪問販売や電話勧誘販売の方法による場合も、事業者の氏名等の明示義務(特定商取引法3条、16条)や書面の交付義務(同法4条、18条、19条)が定められています。
チェックポイント3 対象商品・役務
医薬品、医薬部外品、医療機器、食品(健康食品を含む)、金融商品、家庭用品等に留意。
対象商品・役務によって、一定事項の表示の禁止、表示事項が定められている場合がある。
一定の種類の表示が禁止されていたり、一定の表示事項について基準等が定められている場合があるため、注意が必要です。
薬機法66条(誇大広告の禁止)、同法68条(承認前の医薬品の広告禁止)、健康増進法26条(特別用途表示の許可)、同法31条(誇大表示の禁止)、家庭用品品質表示法3条(表示の標準、遵守義務)等があります。
チェックポイント4 価格表示
価格として何を表示するのか。
①販売価格
②当該価格が適用される商品・役務の範囲(関連する商品、役務が一体的に提供されているか否か)
③当該価格が適用される顧客の条件が明確か
販売事業者が価格を表示した場合、一般消費者は、表示された販売価格で当該商品を購入できる、又は当該役務の提供を受けられると考えます。
その点に誤認を生じさせるおそれがないかをチェックしましょう。
実務的に問題となるケースとしては、二重価格表示(実売価格に比較対象価格を併記する価格表示)を行う場合があります。
1. 二重価格の要件
①比較対象価格の商品が同一の商品であること
- 同一か否かは、銘柄、品質、規格等から判断します。
- 例えば、①衣料品では、色やサイズが違っても同一の価格で販売される場合は、同一とみていいでしょう。
しかしながら、②新品と中古品、汚れ物、キズ物、旧型、旧式は同一とは言えません(ただし、当該商品が中古品等であることを明示する場合を除く。)。
②比較対象価格に用いる価格は正確なものであること
- 実際と異なったり、あいまいな価格表示をしてはなりません。
2. 二重価格表示を行う場合の留意点
(1)過去の販売価格を用いる場合
当該価格がいつどの時点でどの程度の期間販売されていた価格であるか等、その内容を正確に表示することは認められます。そうしない限り、「最近相当期間にわたって販売」されていた価格を用いることが必要です。
- 「最近」は、セール開始時から遡って8週間について検討しますが、8週間に満たない場合は、その期間で判断します。
- 「販売」は、通常の販売活動において当該商品を販売していたことをいいます。
- 「相当期間にわたって販売されていた価格」は、当該価格で販売されていた時期及び期間、対象となっていた商品の一般的価格変動の状況、当該店舗における販売形態を考慮しつつ、個々の事案ごとに判断されます。
- 一般的には、当該価格で販売されていた期間が当該商品の販売されていた期間の過半を占めているときに要件を満たします。ただし、当該価格で販売された期間が通算して2週間未満の場合又は当該価格で販売された最後の日から2週間以上経過している場合は除きます。
(2)将来の販売価格を用いる場合
十分な根拠があることが必要です。需給状況等が変化しても表示価格で販売しなければなりません。変化しても表示価格で販売しなければなりません。
(3)希望小売価格を用いる場合
製造業者等、小売業者以外の者により設定され、あらかじめ公表されているものを用いることが必要です。
製造業者等、小売業者以外の者が、小売業者に対してのみ示している参考小売価格等を比較対照価格に用いる場合は、まず、その価格が当該商品を取り扱う小売業者に広く示されていることが必要であり、かつ「希望小売価格」以外の名称を用いる等して希望小売価格との誤認を生じさせないようにする必要があります。
(4)競争事業者の販売価格を用いる場合
表示をしようとする事業者の地域内において競争関係にある事業者の相当数の者が実際に販売している価格を正確に調査の上、同一の商品について代替的に購入し得る事業者の最近時の販売価格を用いることが必要です。なお、特定の事業者の場合、名称を明示する必要があります。
(5)他の顧客向けの販売価格を用いる場合
当該販売価格の適用される顧客の条件の内容を正確に記載する必要があります。
3.割引率又は割引額の表示を行う場合の留意点
二重価格表示における比較対照価格と販売価格との差を割引率又は割引額又はポイント還元率で表示する場合は、上記の二重価格表示と同様の考え方になります。
チェックポイント5 品質等の表示
不当表示(優良誤認、有利誤認)となるおそれの有無を次の方法で判断する。
①訴求内容(表示)の確定
②訴求内容と事実とのズレの検証
③打消し表示の必要性、妥当性の確認
価格以外の品質等の表示について、不当表示となるかどうかは、次の3つの確認を行うことが必要です。
1. 訴求内容(表示)の確定
表示媒体における表示全体をみて、一般消費者が当該訴求内容(表示)についてどのように理解し、認識するかを確定します。
2. 訴求内容と事実とのズレの検証
1.により確定した訴求内容(表示)と事実との間にズレがないかどうかを確認します。
3.打消し表示の必要性、妥当性
やむを得ず、打消し表示(強調表示の例外を示す表示)が必要となった場合、公取委としては、強調表示に①近接した箇所に(紙媒体では同一紙面に)、②強調表示の文字の大きさとのバランス、③消費者が手に取ってみる表示物の場合、表示スペースが小さくても、最低でも8ポイント以上の文字で、④十分な文字間余白、行間余白で、⑤背景の色との対照性をもって行うべき、などの見解を公表しています。
チェックポイント6 表示の根拠が用意されているか
価格、品質表示等と対応した証拠であって、かつ可能な限り有力な根拠を、予め少しでも多く準備しておく必要がある。
1. 立証責任の転換
消費者庁等から表示の根拠となる資料提出を求められた場合、その資料提出要求書が送達された日から一定期間内(15日以内)に表示の根拠を提出できないと不当表示とみなされるため(景品表示法7条2項)、表示を行う者は、あらかじめ表示の根拠を用意しておく必要があります。
2.証拠準備の留意点
(1)表示に対応した証拠でなければならない
チェックポイント5で指摘したように表示と事実とのズレが誤認につながるため、根拠は表示そのものと対応したものでなければなりません。例えば、テレビCMの内容が、部屋の中で日常生活における効果を表示しているのにもかかわらず、実験室でのデータしかなければ、表示に対応した証拠とはいえない可能性があるでしょう。
(2)証拠は客観的に実証された内容でなければならない
①試験・調査によって得られた結果
- 試験、調査の方法が学術界又は産業界において一般的に認められた方法又は関連分野の専門家多数が認める方法によることが必要です。
それが存在しない場合は、社会通念上及び経験則上妥当と認められる方法といえるかによります。この試験調査は、表示者と関係のない第三者によってされるべきでしょう。
②専門家、専門家団体もしくは専門機関の見解又は学術文献
- 当該商品・サービス又は表示された効果、性能に関連する分野における信頼のおける専門家、専門家団体もしくは専門機関によるもの、可能な限り、いわゆる通説、多数説によるべきでしょう。
チェックポイント7 他人の権利を侵害しないか
他人の創造物を利用する場合等には、他人の権利を侵害しないかのチェックが必要である。
①利用物が他人の権利の対象となるものか
②当該権利の保護期間内か
③権利の制限の範囲内か
④必要な権利者の承諾を得たか
⑤利用方法が適切か
⑥不正競争防止法違反のおそれがあるか
広告で使用する表現内容が、他人の著作権その他の知的財産権等を侵害しないかについての留意が必要です。
チェックポイント8 広告媒体
広告媒体の自主基準のチェックが必要である。
民放連放送基準、テレビショッピングに関するガイドライン(日本通信販売協会)、新聞広告掲載基準(日本新聞協会)、各種プロバイダによる掲載基準等がありますので、チェックが必要です。
チェックポイント9 制作の外注
下請代金支払遅延等防止法(「下請法」)の適用の有無をチェックし、適用される場合は、下請法上課される4つの義務及び11の禁止事項を遵守しているかのチェックが必要である。
1. 広告チラシやパンフレットのデザインの制作を外注する場合、広告デザインは、情報成果物に該当するため、下請法の要件である①資本金基準、②取引の内容の基準を満たす場合には、下請法が適用され、下請法上課される4つの義務と11の禁止事項を遵守しなければなりません。
(1)資本金基準
広告デザインの作成委託は、5000万円基準が適用されます(通常、下請法の対象は、①親事業者の資本金が3億円超、下請事業者の資本金が3億円以下、or②親事業者の資本金が1000万円超~3億円以下、下請事業者の資本金が1000万円以下の場合です。)。
広告を制作する側の資本金が5000万円超のときは、外注先の資本金が5000万円以下であれば、資本金要件を満たします。もし、広告を制作する側の資本金が5000万円以下のときは、外注先の資本金が1000万円以下である場合に、資本金要件を満たすことになります。
(2)取引内容
①親事業者が、印刷会社や広告代理店として他社から広告等の制作を受注するケースに加え、②広告制作能力のある親事業者が自社の広告等の制作を外注するケース(自家使用)も下請法の適用があります。
2. 4つの義務と11の禁止事項
(1)4つの義務
【書面作成】
①書面の交付(下請法3条)
②書類の作成・保存(同5条)
【代金の支払】
③支払期日(同2条の2)
給付を受領した日から起算して60日以内で、かつできる限り短い期間内で下請代金の支払期日を定めなければなりません。
④遅延利息の支払(同4条の2)
給付を受領した日から起算して60日を経過した日から支払日まで年14.6%の遅延利息を支払わなければなりません。
(2)11の禁止事項
【値決め】
①買いたたきの禁止(同4条1項5号)
【発注後】
②-1不当な給付内容の変更の禁止(同4条2項4号)
【受領時】
③受領拒否の禁止(同4条1項1号)
【受領後】
④返品の禁止(同4条1項4号)
②-2不当なやり直しの禁止(同4条2項4号)
【支払方法】
⑤割引困難な手形の交付の禁止(同4条2項2号)
【支払時】
⑥支払遅延の禁止(同4条1項2号)
⑦減額の禁止(同4条1項3号)
⑧有償支給原材料等の早期決済の禁止(同4条2項1号)
【下請事業者に対する要請】
⑨購入・利用強制の禁止(同4条1項6号)
⑩不当な経済上の利益提供の要請の禁止(同4条2項3号)
【その他】
⑪報復措置の禁止(同4条1項7号)
チェックポイント10 広告物の送付方法
郵送かメールかによって、必要な措置を施す必要がある。
1. 個人情報の利用
個人情報を利用して、広告物を送付又はメール送信するために、個人情報を当該個人から直接文書等から取得する場合は、その文書等にあらかじめ広告物、ダイレクトメールを送付する旨の目的を明示しておく必要があります(個人情報保護法18条2項)。
2. 電子メールの場合
電子メールにより送信する場合には、次のとおり注意が必要です。
(1)電子メール広告のオプトイン制度の導入
消費者が事業者からの電子メール広告の送信を事前に承諾しない限り、電子メール広告の送信が原則的に禁止されています(特定商取引法12条の3第1項)。
従来、電子メール広告の受信を拒否する意思を伝えた消費者に対して一方的に電子メール広告を送りつけることを禁止するオプトアウト規制をとっていましたが、迷惑メールは増加の一途をたどりました。特に、拒絶の意思をメールで伝えると、そのアドレスが現に使用されていると事業者にわかってしまい、迷惑広告メールが集中してしまうという弊害がみられ、オプトアウト規制の実効性が疑問視されていました。そこで、法改正がなされ、オプトイン制度(ユーザーが明示的に広告メールの受け取りを承諾した場合にのみ、広告メールが許される制度)が導入されました。
(2)例外的に、以下3つの場合は、未承諾の電子メールの送信が許されます(特定商取引法12条の3第1項1号ないし3号)。
①消費者の請求に基づき電子メール広告をするとき
②消費者に対し、契約の内容や契約履行に関する事項を通知する場合に、電子メール広告をするとき
- 例えば、事業者と消費者が既に取引関係にあって、その取引を円滑に進めるための連絡を電子メールで行う場合において、消費者に送る受注確認メールや発送完了メールの中に事業者の宣伝が入っているようなケースです。
③電子メール広告の提供を受ける者の利益を損なうおそれがないと認められるとき
- 例えば、メールマガジンを利用した場合などは、広告が掲載されていることについて、消費者側の納得感があり、消費者の利益を損なうおそれがない方法として認められます。
(3)記録の作成・保存義務
オプトイン規制の実効性を確保するために、消費者から請求や承諾に関する記録を作成し、保存することが義務付けられています(同法12条の3第3項)。
コラム ~いわゆる「口コミサイト」について~
(1)消費者庁は、平成24年5月9日、「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法の問題点及び留意事項」を一部改定し、その中で、近時インターネット上で見られる「口コミサイト」(人物、企業、商品、サービス等に関する評判や噂等の情報を掲載するインターネット上のサイト)の問題点として、次のような事例を挙げており、留意が必要です。
(2) 景品表示法上、問題となる事例は次のようなものです。
①グルメサイトの口コミ情報コーナーにおいて、飲食店を経営する事業者が、自らの飲食店で提供している料理について、実際には地鶏を使用していないにもかかわらず、「このお店は△□鶏を使っているとか。さすが△□鶏、とても美味でした。オススメです!!」と、自らの飲食店についての「口コミ」情報として、料理にあたかも地鶏を使用しているかのように表示すること。
②商品・サービスを提供する店舗を経営する事業者が、口コミ投稿の代行を行う事業者に依頼し、自己の供給する商品・サービスに関するサイトの口コミ情報コーナーに口コミを多数書き込ませ、口コミサイト上の評価自体を変動させて、もともと口コミサイト上で当該商品・サービスに対する好意的な評価はさほど多くなかったにもかかわらず、提供する商品・サービスの品質その他の内容について、あたかも一般消費者の多数から好意的評価を受けているかのように表示させること。
③広告主が、(ブログ事業者を通じて)ブロガーに広告主が供給する商品・サービスを宣伝するブログ記事を執筆するように依頼し、依頼を受けたブロガーをして、十分な根拠がないにもかかわらず、「△□、ついにゲットしました~。しみ、そばかすを予防して、ぷるぷるお肌になっちゃいます!気になる方はコチラ」と表示させること。
3. 企業活動と景品規制
次に、「景品規制のポイント」を解説していきます。
いうまでもなく、企業において、自社の商品やサービスをより多くの取引先や消費者に提供すべく、景品プレゼント等のキャンペーンを行うことはよく見られます。
しかしながら、この景品の提供について、かなり細かなルールが存在することについては、あまり周知されているとはいえない状況です。
企業としては、せっかく企画したキャンペーンが事後的に問題となったり、場合によって、処分等を受けるようなことを避けるため、景品規制に関する知識を学んでおく必要が高いといえます。
以下解説していきます。
〈1〉 景品規制の基礎知識
(1)規制対象
まず、景品表示法は、過大景品による不健全な競争を防止するために、景品類の最高額、総額等を規制しています。
規制の対象となる景品類とは、「①顧客を誘引するための手段として(顧客誘引性)、②事業者が自己の供給する商品やサービスの取引に付随して(取引付随性)、③相手方に供給する物品、金銭その他経済上の利益(経済的利益性)であって、④公正取引委員会が指定するもの」をいいます(昭和37年公取委告示第3号1項)。
具体的には、(1)「物品及び土地、建物その他の工作物」、(2)「金銭、金券、預金証書、当選金附証券証票及び公社債、株券、商品券、その他の有価証券」、(3)「きょう応(映画、演劇、スポーツ、旅行その他の催物等への招待又は優待を含む)」、(4)「便益、労務その他の役務」の四つが告示によって指定されています。
上記景品類の要件の中で、留意が必要なものの一つは、取引付随性です(末尾ポイント1)。
取引付随性が認められる具体例は次のようなものが考えられます。
- 商品の容器や包装に、キャンペーン内容やクイズなどを印刷するなどして、応募の内容を記載している場合
- 商品を購入しなければ、クイズなどの回答やそのヒントがわからない場合
- 自店の入店者に対して、景品類を提供する場合自社と関連する店の入店社に対して景品類を提供する場合
(2)規制の内容
景品類の提供は、①総付景品と、②懸賞付販売の二つの方式に分かれ、それぞれ規制内容が異なります。
①総付景品
総付景品は、懸賞によらないで景品類を提供するケースです(「一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限」・昭和52年公取委告示第5号)。
すなわち、自社と、取引をした、もしくは取引をしてくれそうな人(例えば来店者)すべてに対して、同一の価値のある景品を渡す場合をいいます
(例:商品の購入者全員に景品を提供する場合、先着○○名に景品を渡す場合)。
総付景品は、懸賞によらないで景品類を提供するケースです(「一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限」・昭和52年公取委告示第5号)。
すなわち、自社と、取引をした、もしくは取引をしてくれそうな人(例えば来店者)すべてに対して、同一の価値のある景品を渡す場合をいいます
(例:商品の購入者全員に景品を提供する場合、先着○○名に景品を渡す場合)。
総付景品の最高額は、景品類の提供に係る取引の価額(☆)の20%以下(当該金額が200円未満の場合は200円)でなければなりません。
また、正常な商習慣に照らして適当と認められる限度を超えてはなりません。ただし以下の4つの例外についてはこの制限を受けません。
(1) 商品の販売もしくは使用のため、またはサー ビスの提供のため必要な物品またはサービス
(例:講習会で渡す教材、電化製品の電池、家 具などの販売に伴う配送等)
(2) 見本、その他宣伝用の物品またはサービス
(例:食品売り場の試食品、宣伝用カレンダー 等で、見本についてはその旨が表示されかつ最 少の取引単位のもの)
(3) 自己の供給する商品またはサービスの取引にお いて用いられる割引券その他の割引を約する証票
(割引券には、他の事業者の商品購入に共通して 使用できるもので、同種の割引を約束するものも 含まれる)。
(4) 開店披露、創業記念等の行事に際して提供する
物品またはサービス (例:レストランの開店に伴 うコーヒーの無料券等)
☆取引の価額は、①購入額に応じて景品を渡す場合は、その購入額であり、②購入額の多少を問わずに景品を渡す場合には原則100円とされる
(ただし、景品提供の対象となる商品・役務の最低額が明らかに100円を下回っているときは、その最低額とされる。)。
ちなみに、ある取引において二つのものが提供される場合であっても、「セット販売」として景品規制を受けない場合があります。
しかし、ここで注意すべきは、セット販売というためには、「二つの商品を組み合わせて販売することが商習慣となっており、一方を無料で提供されたとは認識されない」もしくは「二つの商品が組み合わされることによって別の特徴を持った一つの商品となる」という条件が必要となることです。
例えば、(a)自動車とスペアタイヤ、(b)玩具と菓子が一体となって販売されるパック(玩菓)などはセット販売に該当します。
ただし、セット販売については、独占禁止法上の不当廉売(独禁法2条9項3号)の問題があることにも留意する必要があるでしょう。
②懸賞付販売(クローズド懸賞)
懸賞付販売(クローズド懸賞)は、懸賞により景品を提供する場合です(「懸賞による景品類の提供に関する事項の制限」・昭和52年公取委告示第3号)。
懸賞とは、(1)くじ、その他偶然性を利用して定める方法、もしくは(2)特定の行為の優劣または正誤によって定める方法によって、誰に景品類を提供するか、または提供する景品類の価額を定めること、をいいます(同告示1項)。
まず、一般懸賞の場合、最高額の制限と総額の制限があります。
最高額の制限は、懸賞にかかる取引の価額の20倍の金額(当該金額が10万円を超える場合は10万円)を超えてはならず(同告示2項)、景品類の総額は当該懸賞に係る取引の予定額の2%を超えてはならないという制限があります(同告示3項)。
次に、共同懸賞に当たるのは、末尾ポイント2の場合です。
単に、複数の事業者が共同で行うだけで共同懸賞になるわけではない点に注意します。
共同懸賞の場合の最高額は30万円を超えてはならず(同告示4項)、景品類の総額は、当該懸賞に係る取引の予定総額の3%を超えてはなりません(同告示4項)。
そしてこれらの懸賞以外に、(1)一つの取引に二つ以上の懸賞付販売を行う、(2)総付景品と懸賞付販売が重複する、という類型もあり得ます。
(1)については、同一の事業者が行う場合は、二つ以上の企画の景品を合算して計算し、他の事業者と共同する場合は、各事業者がそれぞれ合算した額の景品類を提供したとして上限を検討します。
(2)は、例えば、購入者全員に景品を提供するほかに、抽選券を交付する場合などがこれに当たります。
なお、総付景品と懸賞付販売を同時に行う場合には、それぞれの規制の範囲内において景品類を提供することができます。
③オープン懸賞
ちなみに、媒体等で広く告知し、購入や取引がなくとも申し込める、いわゆるオープン懸賞については、景品規制の対象とはならず、最高額の規制はありません。
なお、「広告においてくじの方法等による経済上の利益の提供を申し出る場合の不公正な取引方法」(昭和46年公取委告示第34号)は、平成18年4月27日をもって廃止されていますので、現在は、独占禁止法上の「不当な利益による顧客誘引」(正常な商習慣に照らして不当な利益をもって、競争者の顧客を自己と取引するように誘引する行為。一般指定第9項、独禁法2条9項6号)に該当するか否かを検討することになります。
〈2〉 値引き
キャッシュバックなどの値引きは、取引の対価の定め方の問題であり、景品類に当たらないので、景品規制を受けません(昭和37年公取委告示第3号1項ただし書)。
ただし、(1)使途を限定して提供する金銭や、(2)ある取引に付随して他の取引で用いられる割引券を交付することは値引きとはならず、景品規制の対象になるので、注意が必要です。
そのほか、景品類に当たらないものとして、(1)アフターサービスと認められる経済上の利益、(2)商品等に付随すると認められる経済上の利益(例:ショッピングバッグ、メガネのケース、レンズ拭き、映画館の入場者に配られるパンフレット)があります。
【景品規制に関する整理表】
〔主な関連法令〕
景品表示法、独占禁止法
主な公正取引委員会のガイドライン
①景品類等の指定の告示の運用基準について
②景品類の価額の算定基準について
③懸賞による景品類の提供に関する事項の制限
④「懸賞による景品類の提供に関する事項の制限」の運用基準について
⑤一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限
⑥「一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限」の運用基準について
⑦インターネット上で行われる懸賞企画の取扱いについて
ポイント1
規制対象となる「景品類」とは?
- 顧客を誘引するための手段として
- 取引について
①取引することを条件として
②取引することを条件としない場合であっても、取引の相手方を主な対象として
③取引を勧誘しようとして - 相手方に供給する物品、金銭その他経済上の利益
ポイント2
共同懸賞に該当する場合とは?
- 一定の地域の小売業者またはサービス業者の相当多数が共同して行う場合
- 商店街の小売業者またはサービス業者の相当多数が共同して行う場合(ただし、中元、年末等の時期で年3回を限度とし、年間70日以内に限る)
- 一定の地域において同業者の相当多数が共同して行う場合
〈3〉事業者が講ずべき管理上の措置
企業においては、自社が扱う景品に関し、適正に管理を行うために必要な体制の整備、その他必要な措置を講じなければなりません(景品表示法26条1項)。
当事務所では、企業が扱う景品に関する管理体制整備等に関するサポートを実施しております。
参考情報
- 景品表示法について(消費者庁)
- 景品表示法関連報道発表(消費者庁)
- 景品規制に関するQ&A(消費者庁)
- 表示規制に関するQ&A(消費者庁)
- 事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針に関するQ&A
(景品表示法26条1項に基づき事業者が講ずべき景品・表示管理上の措置に関するものです)